1. 共依存(コードペンデンシー)とは

1-1. 共依存の定義

**共依存(コードペンデンシー)とは、本来は相手自身が対処すべき問題に、周囲が過度に関与しすぎてしまう心理・行動の状態を指します。依存症では、ギャンブラー本人が「ギャンブルに依存」しているのに対し、家族(特に妻など)が「ギャンブラーを助けたい」「支えなければならない」**という思いから、過剰に相手をコントロールしたり、問題を肩代わりしたりすることで、自分の生活や感情まで相手に左右されてしまう状態になります。

1-2. なぜ起こるのか

ギャンブルに限らず、依存症のある家族を支える場合には「何とかしてあげたい」という気持ちが強まります。しかし、その思いが度を越して相手の責任や課題まで抱え込むと、自分を犠牲にして相手中心の行動を取るようになります。こうした行動パターンが続くことで、妻側も精神的に疲弊し、結果的には「ギャンブル依存×共依存」という負のスパイラルが生まれてしまうのです。


2. ギャンブル依存者の妻が陥りやすい共依存のサイン

  1. 夫の借金やトラブルを隠す・肩代わりする
    • 夫が作った借金の返済を妻が負担してしまい、自分の貯金や実家からの支援まで使う。
    • 夫のギャンブルによる問題(取り立てや借金催促)を家族や周囲に隠し、ひとりで抱え込む。
  2. 夫の行動を過度に監視し、コントロールしようとする
    • 帰宅時間や外出先をしつこくチェックし、少しでも怪しいところがあると疑いを強める。
    • クレジットカードや財布を取り上げたり、仕事場や付き合い先にまで干渉する。
    • 結果的に24時間夫に振り回され、自分自身の生活や感情を見失う。
  3. 罪悪感や責任感を強く感じてしまう
    • 「私がもっとしっかりしていれば、ギャンブルをしなかったはず」
    • 「妻として至らないから、夫を支えてあげなくては」
    • 自分には責任がない問題まで引き受け、心身ともに消耗していく。
  4. 周囲の助けを拒み、孤立化する
    • 「恥ずかしいから」「これくらい大丈夫だろう」と思って周囲に相談しない。
    • 家族や友人、専門家からのアドバイスを「大袈裟すぎる」と拒否し、孤立してしまう。

3. 共依存がもたらす悪影響

3-1. 妻自身の心身の負担

共依存によって妻は常に緊張状態や不安感の中で過ごすことが多くなります。

  • 不眠や食欲不振、頭痛・胃痛などの身体症状
  • 抑うつ状態、イライラ感の増大
  • 社会生活や仕事に支障が生じる

3-2. 夫(ギャンブラー)の回復を妨げる

一見、妻の過度なサポートが夫を支えるように見えて、実は夫が自分の問題に向き合う機会を奪ってしまいます。

  • 借金を妻が肩代わりしてしまうと、「自分で返済する」という責任感が薄れる
  • 行動の監視や叱責が増えると、夫のストレスが高まり、ギャンブルへの逃避欲求がかえって強まる

3-3. 家庭全体への影響

共依存状態が続くと、家族関係が歪んでいくことが珍しくありません。特に子どもがいる場合、夫婦間の緊張感や不安感を敏感に察するため、子どもの心身の発達にも悪影響が及ぶことがあります。


4. 共依存から抜け出すには?

4-1. 専門家・自助グループに相談する

  • 医療機関(精神科・心療内科)
  • カウンセリング、家族向けプログラム
  • 自助グループ(ギャンブラーズ・アノニマスだけでなく、家族の会も存在)

こうした場では、ギャンブル依存に対して本人だけでなく、共依存の家族も支援対象とするプログラムがあります。自分が共依存のパターンに陥っていると気づきにくいケースも多いので、まずは相談して客観的なアドバイスを得ましょう。

4-2. 「自分の問題」と「相手の問題」を区別する

ギャンブル依存者の問題は基本的に本人が取り組むべき課題です。家族としてできる協力はあっても、本人に代わって問題を抱え込む必要はありません

  • 財産管理など必要最低限の防衛策をとる
  • 借金の返済を肩代わりしない(返済方法を一緒に考えるのはOK)
  • 夫の嘘やトラブルを隠さない

「どこまでが自分の責任・役割か」を意識するだけで、共依存を予防・軽減できる場合があります。

4-3. 自分の時間・生活を大切にする

共依存の状態では、妻が夫中心の生活になり、自分の趣味や友人付き合いが疎かになりがちです。

  • 趣味やリラックスできる時間を確保する
  • 一人で抱えこまず、友人や家族に相談する
  • 自分自身の仕事や将来設計も考える

こうした行動が、自分と相手の境界線をはっきりさせ、精神的な安定を取り戻す手助けになります。


5. まとめ

  • **ギャンブラーの妻が陥りやすい「共依存」**は、相手を助けたい気持ちが強すぎるあまり、自分の生活や感情を犠牲にしてしまう状態です。
  • 共依存は、妻自身を追い詰めるだけでなく、ギャンブル依存者の回復の妨げにもなります。
  • 専門家や自助グループへの相談、相手と自分の問題の境界線を意識する、自分の生活を大切にするなど、共依存から抜け出すための具体的な方法があります。

ギャンブル依存症は本人だけでなく家族にも大きな影響を及ぼす病気です。しかし、適切なサポートとアプローチを取ることで、双方が少しずつ回復や改善の道を歩むことができます。まずは「自分が共依存の可能性がある」と気づくことから始め、専門家や信頼できる周囲に相談しながら、家族全体の健康な関係を目指していきましょう。

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