1-1. 依存症という疾患
ギャンブル依存(ギャンブル障害)は、アルコール依存や薬物依存と同じく脳の働き方や神経伝達物質のバランスに深く関わる疾患とされています。「やめたいのにやめられない」というのは、単に意志が弱いだけではなく、脳内の報酬系の異常活性などの生理学的要因も影響しているためです。
1-2. 病的賭博としての認知
世界保健機関(WHO)やアメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)でも「ギャンブル障害」という診断が設定されており、**医学的にも正式に「病気」**として認められています。
2. 「病気だから仕方ない」は他責思考?
2-1. 病気のせいにしてしまうと…
ギャンブル依存を病気と認めることは、自分の状態を客観的に捉えるうえで重要です。しかし、その一方で「これは病気だから自分ではどうしようもない」「自分が悪いわけじゃない」といった他責思考に陥ると、問題解決に向けた積極的な行動がおろそかになりがちです。
- 他責思考の一例
- 「脳の病気なのだから、やめられないのは当然」
- 「自分は悪くない。周囲や環境のせいだ」
- 「病気だからしょうがないじゃないか」
こうした考え方に留まってしまうと、自分自身でできる対策や改善策に目を向ける機会を失いやすくなります。
2-2. 自己責任と自責思考は違う
他責思考を避けるために、自分だけを責めすぎるのもまた危険です。
- 自責思考:「自分がすべて悪い」と極端に自分を否定する考え方
- 自己責任:問題を直視し、自分にも取り組める部分があると認め、改善に向けて行動すること
ギャンブル依存が病気であることを理解したうえで、「自分にも取り組めることがある」と考え、行動に移すことが重要です。
3. 病気として認識しつつ、自分にもできることを見つける
3-1. 専門家のサポートを受ける
ギャンブル依存は脳や心の病気である以上、専門家の支援が大きな助けとなります。
- 医療機関(精神科・心療内科など)に相談し、専門的な治療を受ける
- 自助グループ(GA:ギャンブラーズ・アノニマス等)やカウンセリングを活用し、経験を共有しながら対処方法を学ぶ
3-2. 行動をコントロールする仕組みを整える
- 金銭管理の見直し
- クレジットカードやキャッシュカードを第三者に預ける
- ギャンブルに使えるお金を最初から持たないようにする
- 環境調整
- ギャンブル場(パチンコ店、競馬場など)の近くを避ける、関連するアプリをスマホから削除する
- 暇な時間を減らすため、新しい趣味や運動など代替行動を取り入れる
3-3. 小さな成功体験を積む
- 「今日1日はギャンブルをしなかった」という小さな達成感を重ねる
- できたこと・よかったことを日記やメモに書き留め、自分を褒める
- 自分に合ったやり方で少しずつ行動を変えていく
4. 他責思考を手放し、問題解決につなげるコツ
- 病気と責任は両立する
- 病気だからこそ、改善に向けて専門家や周囲の協力が必須。自分の意思・行動が全く無力というわけではない。
- どこにコントロール可能な部分があるかを探す
- 依存はコントロールしづらい面があるが、環境やお金の使い方など、行動レベルで変えられる部分はある。
- 継続的に振り返り、軌道修正をする
- うまくいかない日があっても、自分を責めすぎず、次の行動で修正していく。
- サポートを積極的に利用する
- 家族や友人、専門機関のサポートを積極的に得ることで、他責思考を緩和しつつ具体的な解決策を実行しやすくなる。
5. まとめ
- ギャンブル依存は確かに「病気」として認知されており、そのためにやめづらさが生じるのは事実です。
- しかし、その事実を「病気だから自分は悪くない」「やめられないのは仕方がない」という言い訳(他責思考)に使ってしまうと、まったく問題解決につながらないまま、依存が深まる可能性があります。
- 病気の特性を理解しつつも、自分でコントロール可能な部分に目を向け、必要であれば専門家や周囲の協力を得ながら対策を実行していく――この姿勢が、ギャンブル依存から抜け出すうえで大切なポイントとなります。
ギャンブル依存は「仕方ない」と開き直れば問題は悪化するばかりです。病気であっても「治療」「支援」「自身の行動変容」という方法は必ず存在します。自分にできる具体的なステップに取り組み、必要に応じてプロの力を借りながら、少しずつ前進していきましょう。