ギャンブル依存症に悩む人の多くは、同時に借金問題も抱えている場合が少なくありません。ギャンブルによる負債を返済しようとさらにギャンブルにのめり込み、結果として借金が膨らむ――このような悪循環が生まれてしまうことはよくあります。しかし「ギャンブル依存症の問題」と「借金の問題」を切り離さずに同一視してしまうと、解決の糸口が見えにくくなることもあります。本記事では、両者を敢えて“別々”に考えるメリットと、その具体的な進め方について解説します。
1. なぜ“別々”に考える必要があるのか
1-1. 解決アプローチが異なる
- ギャンブル依存症
ギャンブル依存症は、“病気”としての側面が強く、専門的な治療やカウンセリング、自助グループなどのサポートが必要になります。本人の意志だけでは抜け出しづらい性質があり、家族や周囲の理解・協力も欠かせません。 - 借金問題
一方、借金問題は“経済的・法的”な問題としての側面が大きいです。任意整理や自己破産など、法律上の手続きや金融機関との交渉が必要になる場合もあります。借金の返済計画や利息の減免などを進めるには、専門家(弁護士や司法書士など)への相談が重要です。
このように、両者はきっかけとしては繋がっていることが多いですが、解決に向けたアプローチが大きく異なるため、「借金=ギャンブル依存」と一括りにしてしまうと、それぞれの対処法を見失ってしまうリスクがあります。
1-2. 責任の所在を明確化する
ギャンブル依存症と借金問題を混同すると、「借金を返すためにはギャンブルをやめればいい」という極端な結論に飛びついてしまいがちです。もちろんギャンブルをやめることは必要ですが、借金が生じた原因には複数の要素(収入不足、浪費癖、家族関係の問題など)が絡んでいる可能性があります。また、既に膨らんだ借金に対しては法的な手続きや返済プランの見直しが必要になります。
両者を分けて考えることで、ギャンブル依存症の「治療・再発防止策」と借金問題の「解決手段・負債整理」をそれぞれ明確にし、取り組みやすくするのです。
2. 借金問題への具体的アプローチ
2-1. 専門家への相談
借金問題が深刻化している場合は、弁護士や司法書士、あるいは市区町村の法律相談窓口など、公的な機関を活用してみましょう。
- 任意整理: 債権者と交渉して、利息カットや返済額・返済期間を見直す方法。
- 個人再生: 裁判所を通して、借金を大幅に減額しながら分割で返済する方法。
- 自己破産: 裁判所に申立てを行い、支払い不能と認められた場合、借金の支払い義務を免除してもらう方法(一定のデメリットもあり)。
専門家の力を借りることで、経済的なプレッシャーを軽減し、ギャンブル依存症の治療に取り組む精神的余裕が生まれるケースもあります。
2-2. 生活設計・家計の見直し
借金問題の解決には、日々の家計管理の見直しも欠かせません。家族や信頼できるパートナーと協力して、現状の収支を徹底的に洗い出しましょう。
- 毎月の固定費(家賃、光熱費、保険料など)を整理する
- 不要なサービスやサブスクリプションの解約
- 収支を記録するアプリや家計簿の利用
ギャンブル依存症の治療と並行しながら、「借金返済に向けた具体的な行動」を少しずつ積み重ねることが大切です。
3. ギャンブル依存症への具体的アプローチ
3-1. 専門医療機関・カウンセリングの活用
ギャンブル依存症は、アルコールや薬物の依存症と同様に治療が必要な疾患です。精神科や依存症専門外来、メンタルクリニックなどでカウンセリングやプログラムを受けることで、依存症の仕組みや自分の心理状態を深く理解できるようになります。
3-2. 自助グループ(GA)の参加
「ギャンブラーズ・アノニマス(GA)」のような自助グループでは、同じ悩みを持つ仲間と経験を共有しながら、再発予防や日々の過ごし方について学べます。周囲に依存症への理解が乏しい場合でも、自助グループで安心して本音を話せる環境を得られることが大きな支えになります。
3-3. 再発防止策の徹底
治療やプログラムを受けても、ギャンブル依存症は再発リスクが高いという特徴があります。
- お金へのアクセスを制限する
キャッシュカードやクレジットカードの管理を家族や信頼できる人に任せるなど、物理的にギャンブル資金を手にしにくい仕組みを作ります。 - 誘惑の場から距離を置く
パチンコ店やカジノサイトなど、依存を誘発する場所・サイトへの立ち入りやアクセスを制限します。 - 日々のサポート体制の確保
定期的なカウンセリング、自助グループへの参加、家族や知人への状況報告など、日常的にサポートを得られる体制を整えておくことが大切です。
4. 両者を別々に考えつつ、連動させるポイント
「別々に考える」といっても、あくまで“問題を整理する上での切り口”として分けるだけで、実際の行動としては同時進行が基本です。
- 借金問題を弁護士などに相談し、返済計画や整理を進める
- ギャンブル依存症の治療・カウンセリングに取り組む
- 家計の透明化や周囲のサポート体制を構築する
このように並行して進めることで、借金によるストレスを減らしながらギャンブル依存の再発を防ぎ、心身の余裕を取り戻していくことが期待できます。
5. まとめ
ギャンブル依存症と借金問題は、深く結びついているケースが多い一方で、解決に向けたアプローチはそれぞれ異なります。
- 借金問題: 法的手段や家計管理の見直しが中心。
- ギャンブル依存症: 医療機関やカウンセリング、自助グループを活用した治療が中心。
両者を一体化して捉えてしまうと、自分にとって最適な解決策を見逃したり、どこに相談すればいいか分からなくなってしまうリスクがあります。まずは問題を“別々”に整理しながら、それぞれに合った専門家や支援機関に頼りつつ、同時進行で進めていくことが重要です。
ギャンブル依存症も借金問題も、一人で抱え込んでいると解決が難しくなります。家族や友人、専門家の力を借りながら、正しい手順で一歩ずつ着実に前に進んでいきましょう。時間はかかるかもしれませんが、焦らずに取り組むことで、より確実な解決へと近づくはずです。